独身女性の性交哲学

不思議なことに(そうでも無いか)、この本は被ブックマーク数は多いにもかかわらず、言及数がとても少ないです。さすがに読んでも書けないか、あるいは手に取るだけでも抵抗があるかという事なのではないかと思いますが。

独身女性の性交哲学

独身女性の性交哲学

本書は、ソープ嬢の著者が女性のセックスに対する意識の裏側に焦点を当て、女性が男性に抱く幻想、男性が女性に抱く幻想の違いがもたらすすれ違いについて述べた一冊です。似たような境遇にあった酒井あゆみの著書とはまたちょっと雰囲気が違う感じ。

もう徹底的に、男性の幻想と女性の幻想をあぶり出していきます。「愛されること」と「お金を持つこと」を同時に望んでしまう女性に対して、男性の求める物は「セックス」と「安定」と「みえ」。互いに互いを承認し合いたいという願望は変わらないのに、世間は男性にはリードする役割を与え、女性にはエスコートされる役割を与える。などなど。

そういった幻想をあぶりだしていく合間に、「本来精神的にお互いを支えあうというのが恋愛の正しい姿ではないの?」「自分を満足させる為だけの恋愛で本当に永遠の幸せが得られると思っているの?」と、著者は常に問いかけます。この問いかけが本当に居心地悪い!

とはいえ、お互いに別の方向を向いている幻想がかみ合っている間はいいのかもしれないけど、そのバランスが崩れてしまったら、そこに愛情なんて残らないんだろうなというのは、著者に言われるまでも無く分かること。なので、余計に責められている気分になって居心地が悪くなります。これを読んでも「それでも彼から愛されたい!」と開き直る人がむしろ多いんじゃないかと。

で、散々責められた続けた挙句、最後まで読んだ感想は「むなしい」でした。ただひたすら男の幻想と女の幻想を対比させる中で、男の目線の先と女の目線の先はこれほど違う方向を向いているのかという事をこれでもかと見せつけられると、ただむなしさしか残りません。

最後に著者は「ま、別に幻想でもいーじゃん。恋愛とセックスを楽しめばさっ!」というまとめ方をするのですが、若い内からそういう割り切り方をしろというのもなかなか難しい話ではないでしょうか。「自立して自己肯定感を身に着ければ、別にそんなに悩む必要も無いよ?」とは著者の弁ですが、そういう安定した自己肯定感を身につけられるようになるのは、最低限30代くらいにならないとダメなんじゃないかなあ、と想像しています。そういう自己肯定感が身につかないからこそ、相手に愛されて従属される為の恋愛に走るわけで。

女性が女性に向けて書く本なのでよくある話ですが、全体的に女性に対して厳しめです。だからとはいえ男性に甘いというわけではなく、男性に対してはどことなく「男ってかわいそう…」という感覚がにじみ出ているような気がします。やはり「男の現実を嫌というほど知るハメになった」人は、そういう感覚を持つ物なのでしょうか。