イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫)

イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫)

イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫)

Dainさんの所で書評が掲載されていたので、読んでみました。

イワン・イリイチの死

死を目前にして、死と向き合う恐怖心や自分の人生観との葛藤をする男の話。

常に病から来る痛みと付き合いながらも、誰もその痛みを理解してくれるわけでもなく、ひたすら孤独に苛まれる。病に対抗しようと色々頭を悩ませてみるものの、逃れられない死から逃れようとする葛藤する。

最後には自分の人生の意味に疑問を投げかけ、歩み寄ろうにも既に引き返せない孤独に冒される。最後にそれらの業から救われる為に残された手段は…。

何とも恐ろしい小説でした。話が進むに連れて主人公の孤独感が強くなっていき、最後には誰にも理解されないどうしようもない孤独感に為す術も無く取り残される。周りの人間はそういう孤独感を理解できずにただどうしたらいいかも分からずに居るだけ。その両者の間の溝に恐ろしさを感じました。

クロイツェル・ソナタ

結婚後、妻との不仲と妻の浮気に苦しんだ挙句、妻を殺害してしまう男の話。

読み終わって一言。「気持ちは分かる。」浮気を疑う時の不安な気持ちの描写は素晴らしい。思わず「あるあるw」と思うこと多々。だけどこの男の思考パターンもねえ。独特の男性中心主義的な価値観に基づいた女の見方にはうーん…と首肯させられる。

不仲のきっかけは、婚約後に過去の女性関係を打ち明けた事だったんだろうなー。そこは嘘でもいいから良い男を演じきらないと。「この人とはダメかもしれない…」と思わせてしまったら、それを回復するのって至難の業どころでは済まない話だと思う。

訳者あとがきを読むと、トルストイの妻が、妻側の視点から見たカウンターストーリーを書いたという話が載っていたので、是非そちらも読んでみたいところです。こういうストーリーだと、妻側からもかなり言いたい事があるでしょうし、むしろそっちを読みたいです。